夏期講習を控え、受験対策が本格化してきたこの時期、普段の家庭学習の中でなかなかお子さんを褒めることができず、つい叱ってばかりになっているという親御さんが増えてきていると思います。
まず、これは夏前のこの時期にはある程度仕方のないことでもありますので、どうかご自身を責めすぎないでいただきたいです。
しかし、ここでお子さんを追い詰めすぎてしまうと、夏期講習やその後の受験直前期を乗り越えられなくなってしまうリスクもあります。
そこで今回は、あらためて「褒める」ということについて深く掘り下げてお話ししていきたいと思います。
目次
褒めたいのに褒められない悩み
先日、個別面談をさせていただいたMAGONOTEメンバーの親御さんから
「つい怒ってばかりで悩んでいる」
「いいところを見つけるように先生にアドバイスされて、それを実践しようとしているけれど、なかなかうまくできない」
というお悩みを抱えている方がいらっしゃいました。
確かに先生方にご相談すると、「もっといいところがあるはずなので、それを見つけてあげてください」といった助言を受けることが多いと思います。
それは多くの親御さんが十分に理解されていることでしょうし、むしろ「それができないから困っている」と悩んでいる方も多いのではないかと思います。
では、具体的にどう対処していけばいいのか。
私なりの考えをお伝えしていきます。
<対処法①>
小学校受験の評価軸から離れる
まず1つ目にお伝えしたいのは、
「お子さんを褒めるとき、すべてを小学校受験の評価軸で見てしまっていませんか?」
という問いかけです。
年長のこの時期になると、どうしてもお子さんの家庭内のあらゆる行動を“小学校受験の評価基準”で判断するようになってしまいがちです。
そうすると、本来は純粋に成長の一つとして受け止められるような行動や作品までも「小学校受験」という視点で見てしまい、その結果、親御さんの中で自然と褒めることが難しくなり、結果的に叱ることが増えてしまうという悪循環に陥ることがあります。
たとえば、「ぬり絵」を例に挙げてみましょう。
小学校受験の評価軸で考えなければ、お子さんが一生懸命ぬった絵を見せてくれたとき、「いろんな色を使って素敵だね」とか、「きれいにぬれているね」といった声かけが自然にできると思います。
しかし、受験対策を強く意識するようになると、「色をぬるのは当たり前」という考えが生まれて、「はみ出さずにぬれているか」「白い部分を残さずにぬれているか」といった、より厳しい視点で見てしまうようになりがちです。
すると、褒めるべきところが見えなくなり、つい「ここが雑だね」「ちょっとはみ出してるね」といった否定的な言葉が先に出てしまうのです。
もちろん、過去問演習など、明確な評価基準が求められる場面においては、受験の評価軸を意識することも大切です。
しかし、家庭学習や普段の生活の中で、すべての行動・取り組みにおいてその軸を適用してしまうと、子ども自身の「自発的な行動」「挑戦する気持ち」「工夫しようとする姿勢」などが評価されにくくなり、モチベーションを削いでしまう恐れがあります。
たとえば、お絵かきや制作活動といった自由な取り組みの時間に、子どもが楽しそうに絵を描き、それを「見て!」と持ってきてくれたとします。
そんなときには、まず一度、受験の評価軸というメガネを外してみてください。
「ちゃんと完成まで描ききった」「自分から見せにきてくれた」──これだけでも立派な成果です。
つい「この色は違うんじゃない?」とか「もう少し丁寧に描けたらよかったね」と言いたくなることもあるかもしれません。
でも、そのような時こそ、いったん言葉を飲み込んで、ご自身がいま受験の評価軸で子どもを見ていないか、冷静に見直してみることが大切です。
家庭というのは、子どもが安心して自分らしくいられる場であるべきです。
ですが、家庭の中まで学校と同じような評価軸で見られてしまうと、子どもは常に緊張感を持ち続けることになり、ストレスを抱えやすくなってしまいます。
特に受験本番が近づくにつれて緊張感は増していきますから、それまでの期間に少しずつ、家庭では「受験の評価軸ではなく、子どもの努力や工夫、楽しんでいる姿」を素直に受け止める視点を育てていくことが、結果的に長く安定した受験生活を送るための土台にもなります。
そして、何か指摘したくなったときこそがチャンスだと考えてみてください。
たとえば「ここ、ちょっとはみ出してるね」と言いそうになったら、その直前で立ち止まり、「でも最後までやりきったことは素晴らしい」と思考を切り替える意識をトレーニングをしてください。
さらに、「どんなことを考えながら描いたの?」などと問いかけてみると、子どもなりの考えや発想を知ることもできます。
よく言われることではありますが、「結果」よりも「過程(努力のプロセス)」に目を向けること──そこにこそ、親子の信頼関係や自己肯定感の芽が育まれていきます。
そのため、受験の評価軸は必要な場面で活用しつつ、日常生活の中では、もっと柔らかい視点で子どもを見ることを大切にしてみてくださいね。
<対処法②>
褒めるハードルを下げる
2つ目にお伝えしたいのは、少し心の持ち方に関することですが、「褒めること」をもっと良い意味で”軽く”捉えてみてほしいということです。
「褒めるのが苦手」と感じてしまう親御さんには、「きちんとした理由がないと褒めるべきではない」という思い込みがあるように見受けられます。
つまり、何か目に見える成果があるときだけ、あるいは一定の基準に達したときだけが、褒めるに値するタイミングだと思ってしまうのです。
こうした思考傾向は、親御さん自身がもともと非常にまじめで、自分に対しても厳しい姿勢を持っていることと関係している場合が多い印象でです。
「これくらいできて当然」「やるべきことをやっただけでは評価にはならない」というような基準が心のどこかにあって、子どもの取り組みに対しても、無意識のうちにそうした物差しを当ててしまう。
すると、どれだけお子さんが努力していても、「もっとできたはず」「ここはこうすべきだった」といった評価ばかりが先に立ち、なかなか素直に褒めることができなくなってしまうのです。
しかし、対象が幼児期のお子さんである場合、「褒める理由」はそれほど大きなものである必要はありません。
むしろ、日々の些細な挑戦や、当たり前のように見える行動の一つひとつこそが、褒めるに値する大切な成長の証です。
たとえば、ひとつの作品を作り上げたというだけでも、それは立派な努力です。
「こんなものか」と流してしまいそうになる場面でも、「最後まで完成させたこと」「自分から持ってきてくれたこと」など、行動そのものに注目すれば、褒めるべき点はいくらでも見つかります。
また、「毎日受験対策して当たり前」「行きたい学校があるなら頑張るのは当然」といった考えも、つい心の中に浮かんでくるかもしれません。
でも、少し立ち止まって考えてみてください。
遊びたい気持ちを我慢しながら、毎朝決まった時間にプリントに取り組み、集中して絵を描いたり、制作をしたりしている姿──そのすべてが、努力の積み重ねであり、十分に称賛されるべき行動です。
だからこそ、まずは「褒めるハードルを下げる」ことが大切です。
「ここができたから」「基準を超えたから」ではなく、「取り組んだこと」そのものに目を向けてください。
最初は、何かを見せてくれたり、頑張ったときに「見せてくれて嬉しいよ」「頑張ったんだね」と機会的に声をかけることを意識してもまったく問題ありません。
それだけでも、お子さんにとっては大きな安心と喜びにつながります。
ただし、今まで叱ることが多かった親御さんの場合、急に褒められると、子どもが「なんだか変だな」「嘘っぽい」と警戒することもあるかもしれません。
そのようなときは、まずは一言褒めたうえで、そこに自然な関心を添えるようにしてみてください。
たとえば、「上手に描けたね」と言ったあと、「ここに黄色を使ったのはどうして?」と尋ねてみる。
これが、子どもの工夫や気づきを受け止める入り口になります。
こうした質問は、決して答えを導くための詰問ではありません。
ただ、子どもの感じたこと、思いついたことに興味を持つ──それだけで良いのです。
そして何より大事なのは、そのやり取りが“笑顔の中で”行われること。
子どもがリラックスして、自分の世界を言葉にできるような空気感をつくることが、親子の信頼関係を深めることにもつながります。
こうして子どもの発想や考えを深掘りすることで、お子さん自身も「ちゃんと見てくれている」「自分の考えを聞いてくれている」と実感することができます。
その実感が、子どもにとっての達成感や自己肯定感につながり、次の行動へのモチベーションとなっていきます。
さらに言えば、こうした日常のやり取りの中にこそ、小学校受験で求められる「お尋ねへの対応力」や「自由な発想力」を育む足掛かりになります。
決まりきった答えを求めるのではなく、自分の考えを言葉にする、自由に表現する──それができる子どもは、受験の場面でも柔軟に対応できるようになります。
ですから、受験の評価軸で見れば「なぜこの色を使ったの?」と思うようなぬり方も、まずは一度、頭ごなしに否定せず、その選択に込められた子どもの気持ちに耳を傾けてみてください。
そうすることで、お子さん自身の発想力や主体性を大切に育てることができます。
そして何よりも、お子さんにとって一番の報酬は、「見てもらえた」「わかってもらえた」という実感です。
その実感があれば、自然と「次もやってみよう」「もっと工夫してみよう」という前向きな意欲につながります。
褒めることに正解や形式はありません。
大切なのは、評価ではなく共感と関心をもって向き合うこと。
ぜひ、今日から意識的に「褒めるハードルを下げる」ことから始めてみてください。
それが、受験期を乗り越えるだけでなく、長い目で見たお子さんの健やかな心の成長にとって、何よりの土台となるはずです。
「褒める」は受験対策だけでなく
今後の親子関係の土台にもなる
今後受験直前期に入っていくにつれ、親御さん自身の心に余裕がなくなってくると、どうしてもお子さんに対して厳しい言い方をしてしまったり、指摘が増えたり、悪い部分が目についてしまったりすることが増えると思います。
これは、時期的な要因や日々の忙しさ、積み重なったストレスによって、どのご家庭でも起こりうることですので、まずはご自身を責めすぎないでください。
しかし、ここで強調してお伝えしたいことは、「褒める」という行為は、小学校受験のためだけのものではなく、今後の長い子育てや親子関係においても非常に重要だということです。
もっと言えば、この「褒める」という行動が、親子関係のあり方そのものを左右する可能性もあるのです。
今はまだ小さなお子さんでも、これから反抗期や思春期などを迎えていく中で、今のうちから「厳しく叱る」「細かく指摘する」という関わり方が当たり前になってしまうと、将来的に親子関係がギクシャクしてしまう恐れもあります。
ですので、「褒める」ということは、受験という一時期を乗り越えるためのものではなく、もっと長い目で見て、お子さんの成長と家庭の在り方そのものに関わる大切な行為なのだと捉えていただけたらと思います。
さらに言えば、受験対策を通してこうした視点に今気づけたということ自体が、すでにとても価値のあることです。
「自分はつい叱ってしまっていたかもしれないな」「受験の評価軸でばかり見ていたかもしれないな」と気づけたこと、それこそが本当に素晴らしい第一歩です。
その気づきがあるからこそ、これから少しずつでも「自分の見方や接し方を変えていこう」と意識することができます。
それはお子さんのためだけでなく、親御さん自身の心のトレーニングにもなります。
これから先、ますますプレッシャーのかかる場面が増えてくると思いますので、今のうちから意識することが大切になってきます。
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今後とも、どうぞよろしくお願いいたします。
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